株式会社パイロットエースは、特撮アニメキャラクターフィギュアの制作販売企業である。主な事業は原型制作、ノベルティグッズ制作、オリジナルキャラクターデザイン、中国工場への発注管理とされている。OEMの実績も多く、バンダイのウルトラ怪獣解剖図鑑、ガシャポンHGシリーズ、イマジネーションシリーズ、アルティメットシリーズ、カバヤの妖怪食玩シリーズ等が記憶に残る。従業員5名と言えど秀逸な人材が揃い、造形力は他社を圧倒した。生産対象は昭和40年代のキャラクターが多く、懐古と超リアルを追求した商品展開は、大人達の玩具野心を甦らせ共鳴させた。ところが、残念なことに、2009年に社長の他界とともに会社は解散となった。
パイロットエースは、OEM以外にオリジナルも手掛けており、その代表格は何と言ってもリアルスタンダードシリーズである。ガレージキット並みのクオリティを持ちながら、硬質ソフビの半完成品として売り出した当商品は、今日のCCPやXPLUSの先駆となるものだ。リアルスタンダードシリーズが今でも高く評価される点は、一切のデフォルメを施していないことである。直立ポーズをとる個体でさえ、敢えて左右のバランスを崩すことで人間臭さを表し、人が着ぐるみを着用した際に生じる不都合や不自然さをも、あからさまに表現しているのである。このことが超リアリティを生み出した。
一方、当時としては珍しくクリアパーツを積極的に用いている。目の部分はクリア成型されており、ユーザーが簡単に電飾を仕込むことができるよう配慮されているのである。まさに超リアルを追求した商品、それがリアルスタンダードシリーズである。
今回、注目するキングジョーは、同シリーズにおけるトップバッターである。2003年8月3日に開催されたワンダーフェスティバルにて20体の先行販売が行われ注目された。ガレージキットの有名メーカー「ファルシオン」が1999年で活動を停止し、その後、怪獣キットの消滅を食い止めたのが、このキングジョーとされる。
キングジョーはペダン星人が操るロボットという設定だが、超リアルを追求すれば、そのメカニックなデザインと裏腹に、柔軟でダブつくウレタンスーツの特性が強く出ている。実は、自分自身もHGサイズのキングジョーのスクラッチを手掛けたことがあるが、両方の特性を表現するのは非常に難しかった。通常の怪獣のようには、表皮の誤魔化しが効かないのである。動画からキャプチャーした複数の資料を駆使しても、各部位の面的比率を判断することが難しく、トータルで見直しを何度も繰り返さなければならなかった。そんな困難を見事にクリアしてみせたパイロットーイのキングジョーは、7年が経過した今も右に出るものはない究極のキングジョーなのだ。そこには、今は亡き藤原社長の執念が感じられる。
Toy Data
リアルスタンダードソフビ キングジョー パイロットエース 2003.11 ¥10,290