食玩売り場では、すっかり寂しくなってしまったフィギュア商品。ところが、HDシリーズは頑張っている。現行で仮面ライダー、ウルトラマンと特撮フィギュアを展開している貴重な存在である。この、ハイパーシリーズにおける怪獣ラインナップは特に重要だ。かつては、コストの事情から怪獣系は塗装することが出来なかったが、今は価格や全体のバランスから満足のいく彩色が実現できるようになった。
前弾のベムラーは、昭和版か平成版か。ちょっと造形から期待はずれの感が強く、後の進退に不安を抱かせた。しかし、今回のアントラーによって、その問題は払拭されたと思う。
今回の怪獣も一枠。しかし、バージョン違いが用意された。ノーマルver.と顎閉ver.というものだ。具体的には、顎の開き角と上下角に微妙に変化を与えている。本来ならば、顎の付け根の筋肉の収縮によって動くはずのものが、顎パーツの形状のみを操作して角度の違いを出している。それは良しとしても、何とも微妙な差異であり、コレクターにも意味の薄い、製作側が手っ取り早く設定したバージョン違いだ。
さすがに、微妙な形状の違いだけには収めず、メーカーは彩色も差別化してきた。 ノーマルver.はエアブラシで二次彩色しているのに対し、顎閉ver.は全身にドライブラシを施している。したがって、全体はイメージが異なる仕上がりとなっている。どちらが似ているのか、基本的にドライブラシの方は大げさに受け止められるが、砂を浴びたアントラーとして、一つの作例と見れば悪くないだろう。
造形は問題なく、初代アントラーの特徴をよく再現し、触覚などの細かな部分まで作出されている。このシリーズ、今後に期待されるが発売ペースが緩やかなので、ヘビーユーザー向けに単価を高く設定した怪獣スペシャルでもやってもらいたいところだ。
Toy Data
創絶ウルトラマン ベリアルの逆襲 5.アントラー バンダイ 2010.09 ¥380